日本語ERP (自然言語での問い合わせ)

ERP x 自然言語 - 問い合わせ

ERPデータに日本語で問い合わせる:帳票やSQLに頼らない仕組みと注意点

要点

ERPのデータを日本語で質問し、実行したクエリと結果を確認できる仕組みは、読み取り専用・ERP権限の継承・クエリの表示という三点を押さえれば安全に導入できます。モデルは社内で動かし、データは外に出しません。

多くの企業で、ERPのデータを使った集計は情報システム部門への依頼か、決まった帳票の出力に頼っています。「今月の仕入先別の納期遅延率を見たい」といった要望のたびに、帳票の追加開発やCSV出力と加工が発生し、結果が出るまでに数日かかることも珍しくありません。

生成AIを使えば、現場の担当者が日本語で質問し、ERPのデータから答えを得られます。ただし、「それらしい数字」を返すだけの仕組みでは危険です。根拠となるクエリが見えること、権限を超えたデータが見えないこと、誤りに気づけることが条件になります。

仕組み:質問がクエリになるまで

典型的な構成では、モデルが日本語の質問を解釈し、ERPのスキーマ情報(テーブル名、項目名、業務上の意味を説明した辞書)をもとに、読み取り専用のクエリまたはAPI呼び出しに変換します。結果は表やグラフとして表示し、実行したクエリも合わせて表示します。

精度を左右するのは、モデルの大きさよりも「データ辞書」の質です。ERPの項目名は略称や旧来の名称が多く、たとえば社内で「在庫」と呼ぶものがERPの複数のテーブルに分かれていることもあります。用語集と代表的な質問例を整備することが、導入の中心作業になります。

  • 日本語の業務用語とERPの項目名の対応表(データ辞書)
  • よく使う質問と正解クエリの例(評価用セットにも使う)
  • 集計の定義(納期遅延、在庫回転など)の明文化
  • 実行したクエリと結果の件数の常時表示

権限と監査:誰が何を見られるか

もっとも重要なのは、ERP側のロールや権限を継承することです。営業担当が原価を見られない設定なら、AI経由でも見られないようにします。質問と実行結果のログを残し、誰がいつ何を問い合わせたかを後から確認できる状態にします。

接続は読み取り専用を基本とします。受注の登録や価格の変更などの書き込みを将来扱う場合も、人による承認を必須とし、書き込みの内容を実行前に表示する運用にします。

データの置き場所と法令の整理

ERPには、顧客情報、取引条件、原価、従業員の情報などが含まれます。個人情報保護法の対象になる情報は、利用目的の範囲内で扱い、外部事業者への提供や委託にあたる場合は必要な手続きが生じます。営業秘密は、不正競争防止法の保護を受けるために、秘密として管理されていることが求められます。

このため、オープンウェイトのモデル(Llama、Qwen、Mistral、Gemmaなど)を御社のGPUまたは国内のプライベート環境で動かし、外部の生成AI APIにデータを送らない構成を基本にしています。個別の法的判断は、自社の法務部門や専門家と確認してください。

現場での使いどころ

購買では、納期遅延の多い仕入先や単価の変動が大きい品目の抽出、営業では、受注残と出荷予定の確認、経理では、未入金の一覧や科目別の増減の確認などが典型的です。製造現場では、製造指示の進捗や不良の集計に使えます。

対応するERPは、SAP、Infor SyteLine、Microsoft Dynamics 365、NetSuite、OBIC7、GLOVIAなどです。いずれも、読み取り用のAPIまたはデータベースの参照方法を確認した上で、接続方式を決めます。

始め方と正直な限界

まず30〜50個の実際の質問を集め、正解のクエリと答えを用意して、精度を測定することから始めます。この評価セットがあれば、モデルの変更やERPのバージョンアップの際にも品質を確認できます。

ERPのベンダーが提供するAI機能で必要な問い合わせが足りる場合は、それを使う方が運用は楽です。また、定型の帳票やBIダッシュボードで足りる質問にAIを使う必要はありません。AIが有効なのは、決まった形にならない、その場の問い合わせです。

よくある質問

AIが誤った数字を返すことはありませんか。

あります。そのため、実行したクエリと結果の件数を常に表示し、利用者が確認できるようにします。重要な数字は、既存の帳票との突き合わせを最初に行い、評価セットで精度を測定します。

ERPの権限設定は引き継がれますか。

ERPのロールや権限を継承する設計にします。AI経由で、本来見られないデータが見えることがないようにします。具体的な方式はERPごとに確認が必要です。

ERPのデータを書き換えることはありますか。

既定では読み取り専用です。書き込みを扱う場合も、内容を実行前に表示し、担当者の承認を必須とします。

オンプレミスで動かすために、どのくらいの設備が必要ですか。

モデルの大きさと同時利用者数によります。小規模であればGPU一台から始められます。まず利用想定を整理して、必要な構成を見積もります。

BIツールとの違いは何ですか。

BIは定型の指標を継続して見るのに向いています。自然言語での問い合わせは、その場で出てくる形の決まっていない質問に向いています。両者は競合ではなく、併用できます。

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